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藤枝明誠高等学校 男子バスケットボール部
金本 鷹監督 インタビュー<前編>

強豪ひしめく静岡県を制し、全国大会で快進撃を見せ続ける藤枝明誠高校バスケットボール部。
ティアンドエイチ最新インタビュー特集では、藤枝明誠高校を率いる金本鷹監督のロングインタビューを前後編に分けてお届けします。
前編となる第112回では、本年7月に札幌で開催されたインターハイの感想や、U18日清食品トップリーグ2023、冬の大舞台であるウインターカップに対する意気込みをお聞きしました。

取材日2023年8月22日

―インターハイお疲れ様でした。本大会の感想をお聞かせください。
私達のチームは、中学時代に全国大会に出場した経験のない選手が多く、初戦の美来工科高校戦は少し浮足立つかなと思いながらゲームに入りました。ただ、ゲームに入ってみたらそんなこともなく、自分達のバスケットがしっかりできていたので、見ていて安心感がありました。しかしそこが良かっただけに、後半では細かい部分、ルーズボールやリバウンドが疎かになってしまいました。リードをしていたという安心感が惰性に流れてしまったかなと思います。正直な話をすると、試合の途中から「そんな適当なバスケットをするんだったら、俺はもう知らない」と言って、選手を一回突き放したんです。試合は勝つことができましたが、その日の夜、選手達が自主的にミーティングを行ない「自分達のバスケットをもう一回徹底しよう」ということを話し合ってくれました。大阪学院戦の前には「藤枝明誠のバスケットってなんだったの?」と話をし、試合にも勝てたことで一気に勢いに乗れたかなと思います。雨降って地固まるじゃないですけど、美来工科戦で自分達の課題にはっきりと気づけたので、それがその後のゲームに良い形で繋がったかなと感じています。
―準々決勝の東山高校戦は、最後の最後まで勝敗が分からない試合展開だったと思います。東山戦にはどのような気持ちで臨まれましたか?
東山高校戦は今大会の大一番というか、ここを乗り切れば一気に駆け上がれるかなと思っていました。ただ先ほども言ったように、私達のチームは経験値の少ない選手が多く、逆に東山は中学時代に色んな経験を積んでいる選手が沢山いました。そういったチームにどうやって立ち向かっていくのかと、色々と考えてはいましたが、東山高校のペースに合わせてしまったなというのが大きな反省点としてあります。
―ゲームプランはどのようなプランだったのでしょうか?
まず守り勝ちたいというのがありました。選手達にも「点の取り合いはしないよ」ということを言ってゲームに入ったんです。その中でリスクヘッジじゃないですが、東山高校はピックアンドロールが得意なチームなので、やられるとしたらそこかなと思っていました。ただ夏に関しては、選手の育成を考えてそこに特化した対策は時期的に早いかなという気持ちもあり「自分達のディフェンスシステムはこうだから、その延長でピックアンドロールを守ろう」という話をしていました。相手のオフェンスが一枚、二枚上手だったと痛感していますが、特別なシステムに頼らずともあそこまでのゲームができたということが一つ収穫です。選手達にも「自信にしていいところだ」という話はさせてもらいました。
―第3Qの攻防は本当に見応えがありました。特にエースである赤間選手の活躍は素晴らしかったです。金本監督にとって三年生の成長はどのように感じられましたか?
私達の選手はB級グルメだと思っているんです(笑)世代別の代表に選ばれる選手もいないですし、中学時代に全国大会とか代表に選出された経験もない。それでも全国で勝ちたいという気持ちで、ここまで成長してきました。赤間も去年のウインターカップで得点能力を注目してもらえてから、注目選手に上げられるようになりましたが、彼がここまで成長できたのは、彼自身の性格が一番の理由だと思っています。赤間はとにかく努力家ですし、一番は素直ですね。自分が上手くなるために人の話を凄く聞こうとします。そこが彼の伸びた一番の理由なのかなと思います。我々が何をしたわけでもなく、どういう練習したかとか、何をアドバイスしたかと言うよりも、彼がきちんと人の話を聞いて、努力した結果が、あのパフォーマンスに繋がっているのかなと感じています。僕としては大谷翔平選手のような選手になってほしいなと思います。人間としてとても安定していますし、見ていて凄く頼もしいですね。
―キャプテンの小澤選手については如何ですか?
小澤はムードメーカー的な存在です。本当は彼を休ませたいと思ったんですけど、試合状況や、チームでの彼の存在感を考えたら、コートにいなきゃいけないかなと思い下げられませんでした。東山戦の最後に足をつったのは「これからの練習でもっと走りなさい」という、バスケの神様からのメッセージだと思っています(笑)プラス今回のような経験をチームでできたことも大きいので、キャプテンとしてああいう舞台で戦えた経験を冬に向けて活かして欲しいです。9月から始まるトップリーグにも参戦できるので、そういったところで、もう少し気持ちの余裕とチームをまとめるところのバランスを取っていけるようなキャプテンになって欲しいですね。伸びしろはまだ沢山ありますが、この半年間でチームの統率力も付いたので、見ていて本当に頼もしいですし、選手達には「小澤にちゃんとついて行けよ」と言いやすくなりました。
―インターハイはベスト8という成績で終えられましたけれど、金本監督にとってどんな大会でしたか?
悔しい反面、もっと上を狙えるぞという気持ちになった大会でした。先ほども言いましたが、彼らの個の力で、システムに頼らずにここまでやれるということは、冬に向けて良い収穫でした。彼らが新しいスキルを身につけたら、もっと凄いゲームができるぞという意味で、個人的にはワクワクしています。でも彼らからすると、走ったりディフェンスの練習やフットワークなど、厳しいメニューを乗り越えなきゃいけないので「嫌だ…」と思うかもしれないですけど(苦笑)でもそういうことを乗り越えた先に、選手として人として、一回り二回り大きくなるチャンスがあるので、負けて悔しい気持ちとワクワクした気持ちを比べると、ワクワクした気持ちの方が強いかなと思っています。
―トップリーグとウインターカップ予選への意気込みを聞かせてください。
ウインターカップ予選に関しては当然「勝つ」です。そして「ウインターカップでも勝つ」ということが絶対だと思っています。また、トップリーグのようなレベルの高いゲームの中では、経験をもっと積んで育成したいという気持ちがあります。それはスタートで出している一年生の野津や、怪我で離脱している柴田、3番ポジションの檜垣など、試合に絡めたいシューター陣も沢山います。そういった選手達に経験を積ませながら、育てながら勝つということが一つ個人的な目標です。育成と勝負に勝つということは、全く逆の言葉だと思うんですけど、自分の座右の銘として“二兎を追うなら二兎とも得ろ”という言葉があるんです。二兎を追うのであれば両方を得たい。じゃあどうすればそれが達成できるかということを、常に工夫しながら取り組んでいますし、その部分をトップリーグでも成し遂げたいと思っています。
―育成を考えた時“ここまでだったら負けても良い”というラインもあると思いますが、“成長のためには全て勝つ”と考えられているのですね。
そうですね。戦っている時に諦めて良いとか、負けて良いという考え方は個人的にはありません。でも「失敗はしなさい」とは言います。「失敗したらすぐ考えなさい。その失敗を考えて、どうすれば良い方に変えられるかということを常に考えなさい」と伝えるようにしています。失敗を失敗で終わらせると、そこでストップしてしまいます。あぁ…と落ち込むのではなく、失敗は自分が成長するチャンスだと捉えて欲しい。そして負けることも失敗の一つだと思いますが、負けを考えることは絶対やってはいけません。「○○だから負けて良い」ということは一切ない。勝負事なのだから勝ちにこだわることが大切です。例えば控えの選手、一年生がメンバーに入った時に「だから負けたよね」ではなくて、そういう状況なら「二、三年生はフォローしながらチームとして勝つことを考えなきゃいけないよね。そこには絶対工夫が必要だよね」と考えて欲しいんです。「何でできないんだよ」と言うのではなくて、できる立場の人がそれを手助けするのが組織じゃないかと思います。これはバスケットに限らず社会に出ても同じで「何でできないんだ」ではなく「こうすればできるよ。ここはサポートするからお前はここを頑張りな」と言える人間力を育んでいけると良いのかなと考えています。
後編に続く

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